戻る  
  漸く月姫クリアしました記念SS

仮面アキハー(ななスリー)

赤い赤い 赤い髪の毛73(ななスリー)
ダブルタイフーン 翡翠のベルト
力と技の注射が回る
チチが 無いゾ? 妹よ
兄の言葉に血が騒ぎ 力の限りぶちのめす
敵は巨乳のバストロン
斗う狂気の 仮面アキハー73(ななスリー)

(N)
仮面アキハー73(ななスリー)遠野秋葉は天然人外である!
彼女はバストロンとは何の関係もない実の兄に義理の兄が重症を負わされので命を分け与えために胸に栄養が回らず73(ななスリー)になったと主張してやまない!
仮面アキハー73(ななスリー)は、ナイチチの自由と平和のために斗うのだ!

遠野家の朝は早い。一部例外がいるが。
遠野秋葉は、良家の子女として、また遠野家の当主として、毎朝五時には起床し朝の支度を済ませ、六時半には居間でゆったりと紅茶を嗜むのが日課であった。

「いい香りね、琥珀」
「ええ。良い葉が入ったからと、業者の方が分けてくださったものなんです」

使用人の琥珀と、そんな他愛も無い言葉を交わす。
いつもの朝の、緩やかな時間だ。
テーブルには、秋葉のものとは別に一組のティーセット。それが使用されることは、滅多に無い。
それは、この遠野家にあって例外的に貴重な朝の時間を惰眠を貪ることに費やす稀有な人物のために用意されているものだから。
秋葉の意識が、知らず知らずその人物のことを追い始める。
と、まさにその時。

「秋葉さま」

慌てた様子も無く、しかし小走りにメイドの翡翠が居間に駆け込んできた。

「どうしたの、翡翠? 屋敷の中で走るなんて、あなたらしくも無い……まさか!」

何かを悟った様子の秋葉に、翡翠は短く頷いた。

「はい。今朝もバストロンの怪人が」

皆まで聞かず秋葉は立ち上がり、駆け出し、駆け抜け、全速力で兄(でも血は繋がってませんのよ♪)である遠野志貴の部屋へと駆け込んだ。
そこでは、今まさにバストロン怪人の毒牙が志貴に迫っているところであった!

「また、あなたですか!」
「あ、妹だー」

ベッドの上で志貴に迫っていたアルクェイド(今朝はネコミミ装備)は、何とも気の抜ける声で秋葉にそう答えた。

「あなたに妹呼ばわりされる覚えはありません! 兄さんから離れなさい、この吸血鬼!」
「にゃ? 吸血鬼は妹もおんにゃじにゃんじゃ?」

事実無根ではないだけに、さすがの秋葉もちょっと怯む。
もっとも、それで退くような秋葉ではない。

「ええい、もうっ! ああ言えば、こう言う! とにかく、兄さんから離れなさい! 兄さんからも何とか言ってやってください!」
「あ、いや、それはそうなんだけど……」

だらしなく表情を緩めたままで、歯切れ悪く答える遠野志貴。
まあ、金髪美人に擦り寄られて悪い気がするはずもないが。

「無ッ駄にゃ〜♪ 今日の私は猫アルクにゃんだから、思いっきりジャレつくにょよ」

などと言いつつ志貴に抱き付き頬擦りするアルクェイド。
その瞬間、秋葉の中で何かがプツリと音を立てて切れた。

「口で言っても無駄なようですね……仕方ありません! 変身――ななスリャーーーッ!!」
「…………」

秋葉の言葉に従い、脇に控えていた翡翠が秋葉の腰に取り付き腕を回転させる! 所謂ダブルタイフーンだ!
腹のよじれる回転運動のエネルギーにより、遠野秋葉は仮面アキハー73(ななスリー)に変身するのだ!
そして、どこからとも無く勇壮なBGMがっ!

♪う〜すい、うす〜い 薄い胸板73(ななスリー)

「ドサクサに紛れて妙な曲を流さないで頂戴っ!」
「ちぇ」

琥珀は、手にした年代モノのラジカセを止めた。
まだ命が惜しいからだ。

「バストロン怪人ネコアルク! 私と兄さんの心暖まる朝のひとときを邪魔するだけでは飽き足らず、日の高いうちから見ている方が赤面するほどの破廉恥行為に及ぶとは、断じて許せません!」
「え〜〜〜? 目覚めのキスのあと、ちょっと志貴を胸に抱いて余韻に浸ってるだけじゃない」

思わず素に戻り、何気に爆弾発言。
どうやら、今朝の志貴の唇は既に奪われていた模様。

「そ、そそそ、それが破廉恥だと言うんです! 少なくとも私たちの常識ではっ!」
「妹は真面目過ぎるんじゃないの〜? 遠野家の当主なら、もっと大きく構えて太っ腹なとこみせてくれてもいいじゃない」
「お断りしますっ! ええ、もう、全身全霊をもってお断りさせていただきますとも!」
「あ、そうか」

アルクェイド、妙に納得した様子で、ポンッ、と手を叩く。

「妹、ただでさえ胸が薄いからね〜。この上、腹が太くなったら確かにアレだよね♪」

瞬間、部屋の温度が一気に低下した。

「……随分と度胸がよろしいのね? さすがにバカみたいに胸ばっかり大きいだけのことはありますわね」
「にゃにゃ!? ぼ、暴力は反対にゃ〜〜〜」

奇妙に落ち着いた73(ななスリー)の低い声に、アルクェイドは再び猫化して防御姿勢をとる。
しかし、既に部屋は檻髪に覆われ逃げ場は無い!

「覚悟しなさいッ! 73反転キックッ!!」

73(ななスリー)反転キックとはっ!?
反転衝動に駆られた73(ななスリー)が、思わず渾身の力を込めて繰り出すケンカキックである!
決してどこかのヒーロー第三号のワザをマネてるワケではないっ!
でもやるヤツがやるヤツなので、破壊力はモノ凄いゾ♪

「ぅにゃぁぁぁぁぁっ!!」

窓を突き破り庭へと吹っ飛ぶネコアルク。
庭に仕掛けられている地雷に接触したのだろう、続いて盛大な爆発が屋敷を揺るがした。

「大丈夫ですか、兄さん」

73(ななスリー)の言葉に、志貴はブンブンと激しく首を縦に振った。
とりあえず、ここでこれ以上73(ななスリー)の機嫌を損ねるのは命に関わる。

「ああ、ありがとう、秋葉……」
「構いませんわ。兄さんを守るのが、私の使命ですもの」

こうして、遠野家の朝は辛うじて守られたのであった。
だが、いつまたバストロンの次なる魔の手が襲いかからないとも限らない。
というか、次の戦いは、たぶん放課後だ。
負けるな、遠野秋葉!
斗え! 仮面アキハー73(ななスリー)!!

 

(次回予告)

「弓塚さつき……あなたは、いずれバーストロンの大幹部になる女。でも、私には目障りです」
「そんなこと言われても〜。それに、何で大鍋の上で逆さ吊りにされなきゃいけないのよ」
「ついでですから、今夜のカレーのダシを取っておこうかと思いまして」
「じょ、冗談じゃないわよ! だいたい、なんだかんだ言って私の方が扱い悪いんだし、未来に夢を見たっていいじゃない!」
「いいえ! あなたは既に脅威なんです! あなたなんかに票が流れてるおかげで、私はあのあーぱーに勝てないんです!」
「……それって、単にあなたの人気がないだけじゃ?」
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「まず腕から溶かしますね♪」
「いやぁぁぁぁぁっ! 許してぇ〜〜〜!!」

次回 仮面アキハー73(ななスリー)
「敵か味方か? 謎のさっちんマン」
ご期待下さい!

……ウソです。続きません。