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The City of Blossam の世界

The City of Blossamのワールド設定などを記してあります。
必要があり次第、順次書き足していきます。

アメリカ西海岸、ブロッサム・シティ。
花の名を冠されたこの街に、しかし樹花が咲くことは無い。
咲く華は炎と血の飛沫。香るのは硝煙と得体の知れない腐臭。
酸に侵された雨は大気中の有害物質を地表へと導き、止め得ぬ風は粉塵を巻き上げる。
絶望。
それがこの街にふさわしい名だ。
絶望の中で、人はなおも争い続けている。
ありもしない希望を探して。
絶望に華を添えるために。
申し訳程度にシティを管理する議会と、暗躍するシティ・エージェント。
実行戦力として暴徒を抑え、そして自らを抑えきれぬ防衛機動軍。
レジスタンスの翻す反旗に、込められるのは信念か打算か。
トラブルシューターという美名の下、闇に巣食うならず者たち。
この後に及んで破綻した経済の頂点に立つ財団の真意とは何か。

絶望的な未来のために、それでも、人は、今日を生きる。

時代背景

西暦2128年現在、人類は統一的な国際組織を維持することができていません。
一応国連は存在していますし、現在ある主権国家の大半も名目上は存在しています。
しかし、それが密接な連帯を保つことは、物理的に非常に困難な状況です。
技術的に不可能なのではありません。単純に、枯渇した資源が高騰し、採算が合わなくなっただけです。
世界の崩壊は、ただ命が枯れるかのように静かに訪れました。
大戦争も破滅的な天変地異もなく、ただただ静かに世界は活動を停止していきました。
もう、肥大化した人間の世界を支えるだけの力は、この惑星に残っていなかったのです。

このような状況の中、西暦2089年、アメリカ合衆国はひとつの英断を下します。
一部軍事基地を例外として、西海岸の放棄を宣言したのです。
国家国土の自主的縮小。
それまでにも、ロシアがシベリアを半ば放棄するなどの現実はありましたが、政府として国土の放棄を明言したのはこの宣言が初のことでした。
広大な地域の管理運営を放棄し、限られた場所での生存空間維持に全力を注ぐ。
それは実にシンプルで、何よりも実効力において優れた選択でした。
もっとも、もとより州の独立性が高いアメリカ合衆国では、当時の大統領及び政府は厳しい批判に晒されます。しかし、現実は独立心旺盛な各州の政治家と民衆を黙らせるのに十分な過酷さを備えていました。合衆国の力でまかなわれていた金と物の流れを止められた時、放棄反対の各州は州としての独立を保つことができないことを思い知らされることになったのです。
かくして、北アメリカ大陸西海岸は、打ち捨てられた土地となりました。

舞台

合衆国政府による西海岸放棄宣言後も、この地に住む人々が全く居なくなったわけではありません。
むしろ、生活基盤の無い東海岸への移住を拒否し、自由の国を捨て独自の行動に出る人々の方が多かったほどです。
そういった「捨てた」あるいは「捨てられた」人々は、幾つかの都市国家を形成します。
それは国際的に認められた主権国家ではありませんでしたが、住民が必要に迫られて形成したコミュニティーであり、小なりといえ国家と呼ぶにふさわしいものでした。
物語の舞台となるブロッサム・シティは、そういった都市国家のひとつです。
位置的にはサンフランシスコの北約300km、かつてのカリフォルニア州の北端付近にあたります。
付近にはクロム鉱を産出する鉱山があり、貴重な財源となっています。
余談ですが、元々この地は西海岸放棄後も合衆国政府の直轄地域となる予定だったのですが、市民の強い要望とクナップシュタイン財団の要請により、現在のような都市国家として成立できたそうです。
南のネオフリスコ・シティ(サンフランシスコ)とは緩やかな連帯を保っていますが、北にあるオリンピア・シティとは険悪な政治関係にあると言われています。
政治的には、議会制民主主義の流れを受け継いでいます。ただし、自分達を捨てた合衆国への反発からか、大統領制は採っていません。
軍事的には、元アメリカ合衆国陸軍の機械化歩兵部隊を元祖とする防衛機動軍が存在します。彼らは、外敵(主としてシティの外に徘徊する武装流民)と戦う軍隊であると同時に、内部的な秩序を保つ警察の役割も果たしています。そのため、一般的な警察はブロッサム・シティには存在しません。
都市国家のご多分に漏れず、巨大な経済組織コーポレイトが多大な発言力を有しています。ブロッサム・シティの場合、このコーポレイトにあたるのはクナップシュタイン(KS)財団です。つい最近当主が代替わりし、弱冠28歳のカール・ロハルト・クナップシュタインが辣腕を振るっているようです。
これも都市国家にはありがちなことですが、シティ建設当初からの市民と後から流入してきた者とは陰に日向に差別化が成されており、A〜Dのランク分けがまかり通っています。ちなみに、Aランクが上級市民、特に責務を負わない自由市民で、Bランクは一定の労働奉仕を義務付けられてはいますが金品での代替免除を受けられる一般市民、Cランクは代替免除対象外の労働奉仕を義務付けられた労働市民、Dランクは別名デンジャー・ピープルと呼ばれる、一部の市民権を剥奪された人々です(刑事罰などで市民権を剥奪された者や、特別にランク外から市民になることを許された者などです)。それ以外のランク外の者もシティの周辺に存在しますが、彼らはシティの庇護対象外です(場合と人によっては気まぐれに助けてもらえることもありますが)。
Dランク以下の人々の生活は不安定で、いざこざも日常的に発生します。それらのトラブルを(有料で)解決して回る、特殊な技能を持つ何でも屋が存在します。それが、トラブルシューターと呼ばれるならず者で、下手をすればそこらの軍人より腕っ節が強いという厄介な者たちです。
こういった政治の現実に不満を持つ者は少なからず居り、デモなどが頻繁に行われています。中でも過激な連中はレジスタンスを形成し、シティ及び防衛機動軍と武装対立している有様です。
資源は枯渇していますが電子ネットワークには力を注いでおり、シティ独自のサイバー空間が存在します。あらゆる一般的な情報はこのサイバー空間を通じて遣り取りされ、大抵の取引もここで行われます。もちろん、あまり表沙汰にはできない情報や商売も転がっていますが、それに手を出すにはかなりの腕と度胸、覚悟が必要でしょう。
Aランク、Bランクの市民が住む場所はともかく、全体的に見れば街は公害に溢れています。特に、シティ建設以降に流入してきたランク外の人々が住む地域は荒れ放題です。希少で高価な触媒が手に入らないため廃棄物質は垂れ流しの状態で、雨はかなり強い酸性のものです。街は頻繁に光化学スモッグに覆われ、得体の知れない粉塵の混じった風がビルの谷間を吹き抜けていきます。
身体の機械化――サイボーグ手術は存在していますが、あまり歓迎はされません。材料にも、手術にも、維持にもかなりの金がかかるからです。機械化とドラッグにより人間性を失い暴走する者、サイバーサイコの存在が、更にサイボーグへの偏見を高めています。それでも、より大きな力を求めて敢えてサイボーグ手術を望む者も後を絶ちません。