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レジスタンス

レジスタンスは、ブロッサム・シティの現体制に対する反抗ゲリラ組織である。
「抵抗者」という名を冠せられてはいるが、その実態は各種不平分子の集団に過ぎず、参加者は必ずしも愛国心や憂国心、あるいは義侠心に駆られて活動しているとは限らない。
彼らは、主に下層市民からの支持と協力を得ており、シティ議会及び防衛機動軍にとって侮り難い対抗勢力である。
その活動は、嫌がらせの類から本格的な武力衝突まで多岐に渡る。

変遷

レジスタンスの歴史は古く、シティ建設後間もない頃にその原型を見ることが出来る。
彼らは当初、純粋に政治的な平等を訴える市民団体であったが、その勢力を拡大するため政治抗争に破れた政治家や識者、軍人を取り込み始めた辺りから、少しずつ不穏な方向へと道を踏み外していく。結成後五年経った頃には武力闘争を志す風が鮮明となり、レジスタンス――当時の名称はブロッサム・シティ改革評議会――は非合法化され、地下へと潜伏、以後武力闘争の道をひた走ることになる。
殊に、オリンピア・シティ諜報部の支援を受けていた――レジスタンス内部では『暗黒時代』と呼ばれる――時期には、レジスタンスというよりもテロリストと呼ぶほうが相応しい過激な武装集団として活動した。要人暗殺や爆弾テロが日常茶飯事であった頃だ。もちろん、これに対する反発はあり、テロリスト集団としてのレジスタンス首脳部は僅かに三ヶ月程度で内部的に誅殺された。同時に、その悪行がオリンピア・シティによる謀略であったことが公表され、今日のブロッサム-オリンピア両シティの険悪な関係を形作る契機となった。
首脳部が誅殺されたにも関わらず、以後数年に渡りブロッサム・シティではテロの嵐が吹き荒れた。レジスタンスを追放されたテロリストが独自行動に走ったのだ、とも言われているし、反オリンピア感情を煽りたい軍による謀略だ、との説もある。時流に乗じて、ギャングなどの犯罪組織が行ったものだ、とも。真実が何処にあるかは今もって明らかではないが、この時期特に被害を受けたのが下層階級の人々であったことは確かだ。
以後、レジスタンスは数度に渡る内部抗争を経て、下層市民からの支持を受ける組織体系を形作る。すなわち、下層市民寄りの政治的主張と上層市民にとって脅威となる軍事的実行力を兼ね備える反体制組織の確立だ。これを完成形に近付けたのが、現在のレジスタンス首領"見えざる刃"ことジン・ハヤミである。

主張

レジスタンスの主張は、大きく分けて4つある。

1.現行シティ議会の解散と政治制度の改変。
2.市民ランク制度の即時撤廃。
3.累進課税の見直しと物品税及び労務税の撤廃。
4.防衛機動軍の解体と同指導陣に対する徹底した処罰。

これに、富裕階級の余剰財産接収と再分配、社会福祉制度及び設備の充実、善隣外交の推進、過去に遡っての徹底した汚職追及と処罰、保育学校制度の充実、環境回復政策の推進、など、細かく数え上げれば百を越えるお題目が付随する。
これらの主張は、実行性を疑問視されたり一部主張に関して今ひとつ得心いかないものを感じさせつつも、下層市民を中心に広く支持されている。のみならず、一部中流以上の階級の人々の中にもシンパが出来ているほどだ。
無論、一部の理想家を別にすれば、レジスタンス自身このお題目を全て消化できるなどとは夢にも思っていない。これは、あくまでも市民の興味を引くためのデモンストレーションであり、そうして引き付けた市民の目に、レジスタンスの実行力を見せ付けるのが主目的である。
もちろん、それが単なる虚言ではないことを示さねばならないので、レジスタンスは随時彼らの掲げる理想に沿った活動を行っている。その点、動機はともかく彼らが下層市民の味方でありヒーローであるのは間違いない。

活動

冒頭述べた通り、レジスタンスの活動は多岐に及ぶ。
華々しく勇ましい防衛機動軍との武力衝突。もっとも、本格的な衝突となると年に何度かあれば多い方で、普通は拳銃レベルの小型火器を用いての、1分間余りで終息するような銃撃戦どまりである。ジンが指導権を握ってからは、その小競り合いすらも目に見えて減少した。代りに、軍式典や大規模な取り締まりなどの非常に目立つ局面での襲撃を何度も成功させており、防衛機動軍を手玉に取っているような印象を市民に植え付けている。
その華々しい戦果を支えるのが、独自のネットワークを用いての諜報活動だ。情報収集は、サイバースペースよりも所謂足で稼いだ情報に重きを置いており、他の組織とは一線を画する情報網を構築している。
政治的喧伝に関しては、それほど派手に行っているわけではない。ほとんど、口コミに頼っているような状態だ。下手をすれば自らの首を締めることになりかねないだけに、情報の発信には気を使うということだろう。もっとも、だからこそ情報のリークは重要な活動として位置付けられている。
軍などによって不当に追われる下層市民の保護や他シティ、友好アウターサヴェッジへの亡命斡旋、あるいはもっと直接的かつ俗な例では、どうにもならない負債を背負う悪意無き者に代っての借金弁済など、下層市民救援の活動も細々と行っている。これまでは、無視されがちな活動であったが、現指導陣の下では「今必要なことを今成すことこそ民衆の支持を得る要」という方針で積極的に遂行されるようになった。もっとも、レジスタンスの屋台骨自体が大した規模ではないので、活動内容には限界があるが。
他シティやアウターサヴェッジとの政治的な裏折衝も、地味ではあるが一仕事である。
穏健派アウターサヴェッジを主な相手として、武器を含む物資輸出――密輸だが――の真似事も行っている。カンパ以外にこれといって収入源の無い状態を憂慮した現首脳陣により始められた「事業」のひとつだ。

武装

現在、レジスタンスでは特に武装の貸与・贈与は行っていない。銃を取るだけが戦いではない、という方針もあるが、現実問題として構成員全体に行き渡るほどの武器を組織として調達するのが困難であるためだ。戦闘に参加しようという構成員は、自腹で武器を手に入れねばならない。レジスタンスでは、コネクションを活用して出来るだけ安価に武装を購入できるよう斡旋する程度のことしかしていない。但し、首脳陣が特に必要、ないし有用と判断した場合には、秘蔵の武器防具を貸与・贈与する可能性もある。また、ある程度の闘士ともなれば不要な使い古しの武器防具を持つこともままあるので、そういったものを後輩に与えるような個人的な貸与・贈与は日常的に行われている。
こういった状態からわかる通り、彼らの武装にはこれといった基準は無く、各々が思い思いの武装をもって戦っている。

対抗−友好組織

レジスタンスは、当然シティ議会及び防衛機動軍と対抗している。但し、クナップシュタイン財団とは、必ずしも敵対しているわけではない。これは、財団の影響力、わけても雇用力は市民には必要なものであるのため遠慮している面があるだけで、決して財団と友好関係にあるわけではない。
友好勢力には、オリンピア・シティやネフリスコ・シティの野党、一部のアウターサヴェッジなどが挙げられる。
また、組織ではないが、各所にシンパを持っている。財団や軍は言うに及ばず、エージェントにまでそのコネクションは及んでいる。

"見えざる刃"ジン

本名、速水陣。名前と風貌からわかる通り、かなり血の濃い日系人の末裔である。
彼は、18の頃から5年ほどの期間を政府エージェントとして過ごしていた。持ち前の剣技を活かし、半ば強襲に近い暗殺を主に担当していたようだ。"見えざる刃"の通り名も、元はといえばその頃に付けられたものである。この事実は、無論政府の知るところであるが、暗殺担当のエージェントなど存在自体明かすことが出来ず、ジンもまた己の過去についてあれこれ喋る性質ではないため、一般には知られていない。
ジンがレジスタンスに荷担した理由は、今ひとつ明らかではない。政府に仲間を見殺しにされたためだとか、レジスタンス参入当時より親密な関係にあったと言われるシルビアとの関連が囁かれていたりするが、真相は闇の中である。
いずれにしても、ジンが目指しているのが打倒防衛機動軍、打倒シティ政府であることは確かだ。それが何のためなのかはわからないが。

"知恵袋"シルビア

ジンの知恵袋と呼ばれるシルビア・ヒュードリック、実は偽名である。本名は、ブリジット・バークレイ。それなりに経済に関心がある者ならば、その名がクナップシュタイン財団ほどではないにしても巨大な富を誇ったバークレイ・コーポレーションの令嬢のものであることに気付くだろう。
バークレイ・コーポレーションが不可解な経営難に陥り、クナップシュタイン財団に吸収合併された当時、彼女は14歳。父がビジネスを家庭に持ち込む事を嫌う性質であったため、その合併劇の裏に何があったのかは当時彼女の知るところではなかった。
バークレイ・コーポレーションが事実上解体されて間も無く、丁度彼女が学校行事で家を空けていた時にバークレイ家は何者かによる襲撃を受ける。その襲撃者が、クナップシュタイン財団と癒着したシティ議員の差し金による、エージェントの一団であった事が判明するのは少々後のことだ。ともかくも、この事件により彼女は家と家族とを失う。幼いながら何か感じ取るところがあったのか、クナップシュタイン財団による養育を申し出を蹴って、彼女はあてもなくスラムに流れ着く。ジンと出会い、シルビア・ヒュードリックを名乗るようになったのはその頃だ。その後、ほどなくしてジンと共にレジスタンスに参加、現在に到っている。
シルビアの目的も、ジン同様はっきりとはわからない。彼女の生い立ちを知るごく少数の者たちは、復讐が大きな動因なのだろうと噂しているが……?

"懐刀"クリス

クリス・スタックウィルは、元シティ自警団の孫として生まれた。
彼女の祖父は、自警団の一員であったことを死ぬまで誇りに思っていた人物で、かつ、かなり早い段階から防衛機動軍による軍事統制に異を唱えていた。家庭の事情で両親よりも祖父母と共に過ごすことの多かったクリスは、思想的にも技能的にも祖父の影響を色濃く受けている。
そのためであろうか、ごく自然に反体制活動に参加したクリスであったが、その結果災厄が祖父母の元にもたらされた。つまり、レジスタンスに荷担しているとの嫌疑が掛けられ、防衛機動軍に連行・尋問――恐らく実態は拷問だろう――が行われたのである。
元より軍に批判的な祖父は間も無く獄中死、どうにか嫌疑が晴れ戻ってきた祖母も、老躯に受けた拷問が元ですぐに死亡した。これに対し、防衛機動軍から送られてきたのは、無個性な謝罪文が記された印刷物と僅かばかりの慰謝料だけ。
クリスは、己の行動が祖父母に死をもたらしたと嘆くと同時に、より一層防衛機動軍に対する憎悪を燃やす。ほどなくして、クリスは本格的にレジスタンスに参加、以後常に実戦要員として銃弾の中を駆け抜けることとなった。
ジンがレジスタンスの指導権を握ってからは彼に並び立つ最前線の指揮隊長として抜擢され、その行動力をいかんなく発揮している。もっとも、部下の統制は力技であるとの噂もあるが。

"歌姫"ヴァネッサ

クラブ「ブリューネ」で客を魅了する歌姫ヴァネッサ・ラングレイ。実は、有力なレジスタンス・シンパの一人である。
彼女がレジスタンスに荷担する理由は、それほど難しいものでも珍しいものでもない。元々貧しい生まれのヴァネッサにとって、明確な階級差別を容認するシティ議会や居丈高な防衛機動軍は憎悪の対象でしかなかった。
加えて、彼女は姉とその恋人を防衛機動軍によって殺害されている。よくある、レジスタンス狩りを名目にした下層市民への暴行殺害事件だ。それ自体は珍しいものではないが、彼女の憎悪を煽りレジスタンス活動へと走らせるには充分な契機となった。そして、情報担当の活動員として行動するうち、機会に恵まれ現在の地位に到っている。
今日も、彼女は歌姫としてステージに立つ傍ら、情報収集や捜査に関するレジスタンス重鎮として辣腕を振う。